【澤田理絵の３文日記】

思わずふふっと頬が緩むコラムを毎月お届けします。

「ドレス」

  こんにちは。東京は、やっと11月らしい気温になりました。それと同時に、インフルエンザがはやり始めています。食事と睡眠をしっかり取って、手洗いうがいをして、予防に努めたいですね。
　芸術の秋から冬にかけてのこの時期は、1年で1番演奏会の数が多いのですが、演奏家がプログラムの次に頭を悩ますのが衣装です。最近はネットでいろいろなドレスが購入できることもあり、選択肢が増えています。
　ドレスはそもそもどういう観点で選ぶかというと、ホールの壁の色、ステージの広さ、曲のイメージ、共演者とのバランス、季節感などなど。加えて、素材やサイズ感も重要です。冬にはベルベットなどの重厚な生地、春にはチュールのように軽やかなものを選びます。色も同じですね。ワインレットやパープルのような深味は秋以降に、パステル系は春、ビビットカラーは夏にといった感じです。
　デザインを選ぶ決め手となるのは、曲の内容、オペラでは役柄に寄ります。お姫様の役柄であれば、ふんわりと膨らんだ豪華なものを。歌曲であれば、形はスレンダーだけれど、色や素材で見せるということもあります。最近では、着物のリメイクドレスや、パンツドレスなども増えてきましたし、上に書いたことは傾向であって決まりではないので、衣装選びにも存分に個性を発揮し、耳でも目でも楽しめるコンサートが増えています。

　衣装は美しいことが重要ですが、心地よい着用感も同じくらい大切です。演奏する楽器によって、体の動かす部分が違うため、着心地のチェックポイントは様々ですが、声楽の場合はブレスがスムーズであるかどうかを必ず確かめます。同じサイズのドレスであっても、デザインや素材によって息がどれだけ吸えるかが微妙に変わるからです。
　ドレスは音楽家にとっての勝負服です。お気に入りの1着を纏い、ステージに立つと、何とも言えない幸せな気持ちになります。音楽を彩ってくれるドレスたちとの思い出もたくさんあります。
　いよいよクリスマスシーズンの到来ですね。クリスマスといえば赤！これから、赤いドレスが大活躍してくれます。
　来月はいよいよ師走。残り少ない秋を楽しんでお過ごしください。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ソプラノ歌手澤田理絵