「6小節がつないだ縁」
皆さんこんにちは。「3文日記」創刊号をお届けします。
作編曲家みながわちかこと、ソプラノ澤田理絵の二人で始めたモーニングコンサート、記念すべき第1回目が先月無事終了しました。コロナの状況も、残暑も厳しい中、会場に足を運んでくださった皆さん、応援してくださった皆さん、ありがとうございました。
今回のコラムでは、私たちの出会いについて書いてみようと思います。
遡ること四半世紀前。
夏の風物詩ともいえる長寿番組、日本テレビ系列24時間テレビ「愛は地球を救う」の中で、障害のある人とない人でコンサートをしようという企画がありました。指揮者は、多数のジブリ作品の曲を手掛ける久石譲さん。オーケストラ、ハンドベル、ギターやドラム、合唱団などなど、200名くらいのメンバーで作る大コンサートです。私はソプラノのソリストとして参加させていただくことになりました。
歌うのはたった6小節!
それでも、オーケストラをバックに、日本中のお茶の間に届く電波で歌わせていただく高揚感や責任と日々向き合う時間は極上のものだったことを、今でもよく覚えています。
そして、何度目かの練習に参加した時。コンサートの企画に携わる会社の女性スタッフが、私のところにやってきて、歌う部分を長くするので、ほかのソリストと一緒に歌ってほしいと言うのです。私は、割り振られた6小節に対する思いをお伝えしたうえで、ぜひこのまま歌わせていただきたいことをかなり強い口調で懇願したと思います。
そう。
まさに、その女性スタッフがみながわさんだったのです。
そんな出来事がありつつも、コンサートは成功に終わりました。
そして、その数か月後。
別のコンサートの現場に行ったところ、「今回共演していただく伴奏者です」と紹介されたのがみながわさんでした。みながわさんは、「あ!あの時の怖い歌の人、また居る!」と思ったと、数年後に教えてくれました(笑)。
このときは、その後の長いお付き合いを想像だにしませんでしたが、一緒にコンサートを作り上げていくにつれ意気投合し、今に至ります。この間、1冊本が書けるくらいいろいろなことがありました。ステージでのハプニングや、楽屋での秘話など、私たちの歴史をこのメルマガでご紹介していきたいと思っています。
2年半近いコロナ禍で、たくさんのコンサートが中止になりましたが、私たちはこれからも新たな気持ちで1歩ずつ少しずつ歩を進めていきますので、応援していただけましたらうれしいです。
最後に、このコラムのタイトル「3文日記」について。
「早起きは3文の徳」
早起きをすればよいことがあると解釈している人が多いのではないでしょうか?
私もそうでした。
ところが、調べてみたところ、3文とは、たいして価値のないことを意味します。
三文判なんて言う言葉があるくらいですからね。 洗濯物のポケットから思いがけず500円が出てくるなどということは稀ですが、お掃除してたらお部屋の隅に100円が落ちてたなんてことは、もう少し日常的かもしれませんよね。このコラムが、皆さんの生活の中で100円を見つけた時のように、大金ではないけれど、思わずふふっと頬が緩む存在になれたらとの願いから名付けました。
また次号でお会いしましょう。
ソプラノ 澤田理絵