【澤田理絵の３文日記】

思わずふふっと頬が緩むコラムを毎月お届けします。

「恩師」

じめじめした毎日が続いていますが、お変わりなくお過ごしですか？
　人は、自分が生まれた季節を好むのだという話を聞いたことがあります。
なるほど。
私が春を愛するのは、4月生まれだからなのかもしれません。
あなたはどの季節がお好き？

　先月、高校時代の恩師に感謝の気持ちをお伝えするコンサートに出演しました。
O先生は私の最初の声楽の恩師です。中学3年の時。興味本位でコンクールを受けてみようと思い立ち、歌を聞いていただいたのが先生との出会いでした。そのときに声をほめていただいたことが、音楽の道へ踏み出す大きなきっかけになったと思っています。
　高校時代は本当に厳しいレッスンでした。そして、不真面目でできの悪い私は、先生にたくさんご迷惑をかけたりもしました。それでも先生は、根気強くそんな私を育ててくださいました。
休日返上でコンクールに引率してくださり、私の声が壊れたときは一緒に涙してくださり、歌い手としての心構えや音楽のすばらしさをたくさん教えていただきました。
　音楽大学への進学が決まった時にかけていただいた言葉は、ずっと私のバイブルです。
　「小さな痛みをなめず、一歩ずつやっていけば必ず道は開けるから。」
「小さな痛み」の意味が理解できたのは、それからずっと後のことでしたが、先生からの贈り物に支えられ、たくさんの方々に支えていただき今があります。
　世代を超えて集った門下生たちの演奏会は、満員のお客様に見守られ、盛況の中幕を下ろすことができました。出演者全員が同じ気持ちで臨んだ部隊の一体感に胸が熱くなる瞬間が何度もありました。
　みんなの気持ちを、コンサートという形にできたこと、それを先生にお聞きいただけたこと、とても幸せな気持ちです。
　ここだけの話、恩師の前で歌う緊張感は、高校時代から全く変わっていませんでした！
まだまだ精進が足りませんね！

　　来週のモーニングコンサートのゲストはギターです。私の大好きな「アルフォンシーナと海」を歌います。とても素敵な曲なので、ぜひお聞きいただけたら嬉しいです。

また次号でお会いしましょう。
　　　　ソプラノ澤田理絵